多くの金融機関が住宅ローンを取り扱う昨今。
金利、借入れ条件、サービス、利便性など、さまざまな特徴を備えた商品が揃っているため、
どのローンを選ぼうか迷ってしまうほどです。
そんな住宅ローンは、取扱金融機関によって「民間ローン」「民間+公的ローン」「公的ローン」の3つに分けられます。
●民間ローン
銀行、信用金庫、保険会社など民間の金融機関やノンバンクが取り扱う住宅ローン。金利タイプを固定型、固定期間選択型、全期間固定型から選択できるなど多彩な返済プランを備えていることが多く、借入れ条件の幅も広いため、いろいろな選択肢の中から自分に合った商品を選べます。さらに多くの金融機関で、手数料の一部が無料になったり期間限定で金利が優遇されたりする独自のサービスやキャンペーンを行っているのもポイント。
●民間+公的ローン
住宅金融支援公庫の「フラット35」がよく知られています。フラット35は、民間金融機関の住宅ローンを、国が運営している住宅金融支援機構が買い取って証券化した住宅ローン。取り扱う金融機関により金利や手数料は異なるものの、全期間固定型の金利で、返済期間は最長35年です。ローンを借りる時の保証料が不要、繰上返済手数料が無料といったメリットも。また、省エネ性など一定の条件を満たせば、当初5〜10年間の金利を0.3%引き下げる「フラット35S」が、長期優良住宅に認定された住宅なら償還期間の上限を50年とする「フラット50」が利用可能です。
●公的ローン
公的ローンの代表例と言えば「財形住宅融資」。このローンは勤務先で財政貯蓄を1年以上続けた貯蓄残高50万円以上の会社員が対象で、財形貯蓄残高の10倍、所要資金の90%までの借上げが可能です。ただし借上げの最高額が4,000万円と、ほかの金融機関に比べると低額に感じるかも知れませんが、勤務先が金利の一部や全部を負担してくれるケースもあるようです。金利は5年固定型で、当初5年の金利が民間ローンよりも比較的低いとされています。
住宅ローンを選ぶ基準は、年収や家族構成、将来の人生プランなどでも変わってきますが、以下の点は忘れずにチェックしてください。
「金利はいくら?」
高額のお金を長期間にわたって返済する住宅ローンは、わずか0.1%の金利の違いで返済額が大きく変化します。後述する金利タイプ(変動型・固定期間選択型・全期間固定型)にも注目してください。
「返済方式は?」
「元利均等返済方式」と「元金均等返済方式」の2種類の返済方式があります。後ほど詳しく説明しますが、返済方式によって、毎月の返済額や、トータルの返済額が変わってきます。
「どんなサービスがある?」
月々の返済だけでなく、団体信用生命保険や手数料など、各種費用の内容を見比べて利便性にすぐれた商品を選びたいもの。繰上返済の予定があるなら、手数料がどれくらいになるかも調べておきましょう。
「審査に通りそう?」
ローン審査をクリアしなければ、お金を借入れることはできません。もしも審査が通らなかった場合に備えて、複数の住宅ローンを候補に挙げておくと良いでしょう。
住宅ローンの金利タイプは「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」の3種類があります。
変動型
その名のとおり、金利情勢の変化に伴い、金利が変動するタイプ。通常、金利は年に2回、返済額は5年に1回見直しが行われます。今のところ、ほかの2タイプと比べると金利が最も低くなっていますが、今後もしも金利が上昇すれば、返済額が増える可能性もあります。そのためどちらかといえば家計に余裕があり、金利の変動に応じて機敏に対応できる人、短期間で繰上返済が可能な人などに向いていると言えます。
【メリット】
【デメリット】
固定期間選択型
3年、5年、10年など一定期間の金利を固定し、固定期間終了後はその時の金利に応じて次のタイプを選択します。固定期間選択型の金利は、変動型よりは高く、全期間固定期間型よりは低くなっています。現在の低金利を活用しつつ金利情勢の変化に対応したい人、数年後に収入が増える見込みがある人などに向いているでしょう。
【メリット】
【デメリット】
全期間固定型
借りた時の金利が、返済終了までずっと固定されているタイプ。当初から返済額が確定しているので、金利変動の影響を受けずに安心して返済したい人などにおすすめです。ほかの金利タイプと比べると金利が高くなりがちですが、「歴史的な低金利」と言われる昨今は、全期間固定型とは言え金利が低めに設定されています。
【メリット】
【デメリット】
金利と変動リスクの関係は比例しています
下の表は、3つのタイプの金利と安定性について分かりやすくまとめたものです。全期間固定型は金利の変動リスクが低く安定性にすぐれていますが、変動型は金利変動リスクが高い反面、低金利という魅力があります。安定性をとるか低金利をとるかは個々の考え方にもよりますが、「歴史的な低金利」と言われる昨今は全期間固定型であっても金利が低くなっていますから、ある意味で狙い目と言えるのではないでしょうか。
全期間固定型は借りた時に金利が決まってしまいますから、低金利の今ローンを組むと、将来的に景気が回復して金利が上昇しても低金利のまま返済が可能です。あなたもぜひ、このチャンスを逃さないでください。
金利と変動リスクの関係は比例しています
当初の返済額を抑えて毎月決まった金額を返す「元利均等返済方式」と、当初に多く返済するものの徐々に返済額が軽くなる「元金均等返済方式」の2つがあります。トータルの返済額は後者の方が安くなりますが、将来の生活プランや家計も考慮しながら選択しましょう。なお、元金均等返済方式は取り扱い金融機関が少なくなっていますが、「フラット35」ではどちらの返済方式も選択可能です。
元利均等返済方式
毎月返済する元金と利息(金利)の合計額が一定で、返済開始から終了まで家賃のように決まった額を返済します。返済当初は毎月返済額に占める利息の割合が多く、その後は徐々に元金の割合が増えていきます。一般的に広く利用されている返済方式です。
【メリット】
【デメリット】
元金均等返済方式
毎月一定額の元金と、ローン残高に応じた利息の合計額を返済していく方式。利息を先に払うため返済当初は元金均等返済方式よりも毎月の返済額は高くなります。しかしその後は利息が減っていくので返済額も徐々に軽くなり、総返済額が少なくなります。
【メリット】
【デメリット】
■元利均等返済と元金均等返済の比較
※借入れ金3000万円、全期間固定金利3.0%、ボーナス返済なし、30年返済の場合。諸費用は含まず
年目 | 元利均等返済方式 | 元金均等返済方式 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
毎月の返済額 | 毎月の返済額 | |||||
元金(円) | 利息(円) | 返済額(円) | 元金(円) | 利息(円) | 返済額(円) | |
1年目 | 51,481 | 75,000 | 126,481 | 83,333 | 75,000 | 158,333 |
5年目 | 59,653 | 66,828 | 126,481 | 83,333 | 62,708 | 146,041 |
10年目 | 69,294 | 57,187 | 126,481 | 83,333 | 50,208 | 133,541 |
15年目 | 80,493 | 45,988 | 126,481 | 83,333 | 37,708 | 121,041 |
20年目 | 93,501 | 32,980 | 126,481 | 83,333 | 25,208 | 108,541 |
25年目 | 108,613 | 17,868 | 126,481 | 83,333 | 12,708 | 96,041 |
総返済額 | 45,533,001円 (内、利息分は15,533,001円) |
43,537,380円 (内、利息分は13,537,380円) |
住宅ローンは毎月1回コツコツ返済する「毎月返済」が基本ですが、これに加えて、ボーナス支給時に割り増しして返済する「ボーナス返済」を行うこともできます。ボーナス時にいつもより多くのお金を返せば、毎月の返済額を減らせるという仕組みです。
ボーナス返済の割合は金融機関により異なります。例えば住宅金融支援機構の「フラット35」なら、借入れ額の40%以下であればボーナス返済が可能です。
ただ、会社によってはボーナス支給額が予想しにくい場合もあることでしょう。会社の業績や本人の実績などでボーナス支給額の変動が激しい会社にお勤めの場合は、毎月返済だけでローンを組む方が無難です。一方、ボーナス支給額が比較的安定している会社にお勤めであればボーナス返済の併用も検討してみてはいかがでしょうか。
これ以外にボーナスを活用する返済方法としては、ボーナスによる繰上返済があります。
「併用ローン」や「ミックス返済」で利便性を高めては?
住宅ローンは基本的にどこから借入れてもOKと前述しましたが、ローンを1本に絞るのではなく、複数のローンを組むことも可能です。複数のローンを組み合わせることを「併用ローン」と言います。
併用ローンの例としては、民間+公的ローンの「フラット35」を申込み先と同じ金融機関で、金利タイプの異なるローンを併用する「フラット35パッケージ」や、公的ローンの「財形住宅融資」と「フラット35」を併用するパターンなどがあります。
金利プランの異なるローンを併用すれば、金利情勢の変化に伴うリスクを少しでも分散することができます。また、自分たちに合った返済プランを立てやすくなるケースもありそうです。とは言えメリットばかりではなく、手続きの手間や手数料などが余計に発生してしまいます。
最近では、同一のローン内で複数の金利タイプを組み合わせて返済する「ミックス返済」が可能な金融機関もあります。それぞれのローンのメリット、デメリットを比較しながら、自分に合った返済プランを立てましょう。